会えない時のために、こんにちは、こんばんは。そしておやすみ。
どうも、かず(@kazu_eigablog)です。
今日紹介するのは、『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』です!
「もし今。まさに今。あなたの耳がまったく聞こえなくなったらどうします?」
誰かに電話で相談もできません。目の前の家族の言葉も聞こえません。
めっちゃ怖いですよね。
天才クリストファー・ノーランの初期の映画に『メメント』という映画がありました。
記憶喪失になった男が妻を殺害した犯人を追うという映画で、映画の時系列を巧みに操ることにより、観客に記憶喪失を体験させました。
本作は重度の難聴になるということがどういうことかを観客に体験させる映画です。
アカデミー賞の音響賞作品を獲得しているだけあって、音の演出がすごいです。
(ちなみに作品賞・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞・編集賞・音響賞の主要6部門にノミネートされている)
本作では主人公が難聴になる原因は積極的には明かされません。突然起こる原因不明の悲劇です。
この状況があなたに起きないとは言い切れないでしょう。
難聴になった時のために、この映画を観ておこうなんてことは言いません。ただし、今現在難聴で苦しんでいる人たちもいる。
そういう人たちの姿をこの映画で目にするだけでも、あなたの世界を観る目はきっと変わることでしょう。
この映画を観た後あなたは、今よりもやさしい人間になっているはずです。
本作はAmazonオリジナル映画なので、いつでもプライムビデオで観れます。
ど派手なアクション映画もいいですが、こういう人間ドラマを観て映画で人として成長する機会を逃してはいけない。
では本文にレッツ・ゴー!
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- 静かな人間ドラマ嫌いじゃないよ
- 難聴になることを追体験して、新たな目で世界を観たい
あらすじ
メタルドラマーのルーベンは、聴力を失い始める。医師に今後も悪化すると言われ、ミュージシャンとしての自分も人生も終わりだと考える。恋人のルーは元ドラッグ依存症のルーベンをろう者のコミュニティーに参加させ、再びドラッグに走ることを防ぎ、新しい人生に適応できることを願う。ルーベンはろう者のコミュニテーで歓迎され、ありのままの自分を受け入れるが、新しい自分とこれまで歩んできた人生とのどちらかを選ぶのか葛藤する。
予告編
レビュー・解説

静かな余韻を残す秀作の誕生
(映画の楽しみを台無しにするつもりはないですが、まっさらな状態で観たい人はUターンでお願いします)
非常に感想を書くのが難しい映画です。いまだに明確な答えが出ていません。ただし勉強するような小難しい映画と捉えられることも不本意。
言えることは、非常におもしろい映画です。観た方がいいということだけは確かです!
(アカデミー賞の作品賞・主演男優賞・助演男優賞・脚本賞・編集賞・音響賞にノミネートされているし!)
この感想を書くことの難しさの正体は、主人公自身も最後まで悩み続けることに起因するのかも。
映画自体も明確な答えを用意してくれているわけではない。
本作の主人公ルービンはある日突然聴力を失い、病院での診察の結果インプラントの存在を知る。
(『クワイエットプレイス』でミリセント・シモンズが演じるリーガン・アボットが耳につけてるやつも同じやつなのかな?)
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音楽を生業とするルーベンとしては、もちろん聴力を取り戻したい。しかしそのインプラント手術が非常に高額。すぐには手術を受けられないので、ろう者のコミュニティに入ることになる。
このコミュニティの描写が非常に興味深かったです。
音以外のコミュニケーションが非常に豊富!
- スキンシップ
- 光の明滅
- 手話
- 表情
- 文字(メールも含む)
- ジェスチャー(手話ではない)
もちろん、これらの表現は健常者(この言い方も、この映画を見た後だと使うことに抵抗がある)も使います。
しかし無音の中で繰り広げられる手話などのコミュニケーションは、音を使った言葉の代替物では決してないんですよね。
最初は苦労していた主人公ルーベンも、次第にコミュニティに慣れだすと居心地がよくなってくる。
しかしこのコミュニティは閉じたコミュニティなので、外部とのやりとりがない。
恋人かつバンドメンバーのルーがいる外と、ろう者のコミュニティのどちらかを選ばないといけない。
恋人のルーとは、説明はないものの着ているTシャツをシェアしているように見えた。
かなりの共依存の関係のよう。
音の演出がすごい

アカデミー賞を獲るだけあって、無音の演出がすごいです。
最初にも書きましたが、ろう者の生活をルーベンを通して観客も追体験することになります。
実際に難聴になったことがないので正しいのかはわかりませんが、耳を悪くしてからはすべての音が”もごもごとした”こもった音として表現されています。
今まで聞こえていた恋人の声も、どこかで小さく聞こえるもごもごとした音。
めちゃくちゃ怖いです。
聞こえないという演出も然りですが、先に書いたコミュニティでの生活もろう者の生活の追体験の一つ。
本作の白眉は、ついにインプラント手術をし人工内耳手に入れた際の音の聞こえ方でしょう。
悪い意味で、すごい音です。
みんなで一緒に生きていく道はないのか?
本作では主人公ルーベンは、”外の世界”か”ろう者のコミュニティ”どちらの世界で生きていくか二者択一を迫られる。
しかし思う。みんなありのままで一緒に生きていくことはできないのだろうか。
何を言おうと、これが今の世界の現状なのでしょう。
だけどこの映画の存在が、少しは架け橋になることを願わずにはいられない。
キャスト

主人公ルーベンを演じるのは、リズ・アーメッド。
トム・ハーディーが出ていた『ヴェノム』で敵役を演じていました。『ヴェノム』の時は、ちょい怪しいアジア系の人種かと思っていました。
実際はパキスタンかの移民の子どもで、イギリス出身らしい。
今作ではメタルバンドのドラマーなので金髪です。金髪が似合っていてかっこいいです。
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(昔の記事なので、稚拙なのであまり観られたくないやつ)

ルーベンの恋人であるルーを演じてるのは、『レディ・プレイヤー1』でアルテミスを演じていた、オリヴィア・クック。
初見ではまったく気づきませんでした。
不健康で精神の弱そうな、メタルバンドのボーカルへのなりきりっぷりがすごい。

ルーの父親を演じていたのは、『007/慰めの報酬』でヴィランであるドミニク・グリーンを演じていたマチュー・アマルリック(写真右)。
NETFLIXオリジナル映画『オキシジェン』でAIの声もしていましたね。
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