会えない時のために、こんにちは、こんばんは。そしておやすみ。
どうも、かず(@kazu_eigablog)です。
今日紹介するのは、『最後の決闘裁判』です!
- 「上映時間が長い」
- 「三者三様の証言が出てくるけど、一体誰が正義なのやら」
- 「なんでラストでマルグリットは浮かない顔をしているのか」
本作は早川書房から原作本が出てい流ものの、パンフレットがないんですよね。
なので時代背景を知るための、副読本がありません。
最近たまたま聴いていたラジオで、女性の人権のことについて話していたのを耳にしました。
そこで得た知識が本作の理解の一助になる気がしたので、シェアしたいと思います!
アメコミヒーロー映画が劇場を席巻しているけど、こういう骨太な映画も観てほしい。
2021年現在御歳83歳の巨匠リドリー・スコットの作品がパンフレットも作られず、上映館もこんなに少ないのは映画ファンとして非常に悲しい。
手や目からビームは出ないけど、本作の重量を持った鉄と鉄がぶつかり、当たれば即死間違いなしの決闘シーンは手に汗握るし、地味だと思わないでめっちゃ観てほしい映画です。
さらにジェンダー(性差)の話として、非常によくできています。
では本文にレッツゴー!
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こういう人にオススメ
- ジェンダーについての見識を深めたい
- 中世の狂った時代を味わいたい
- 手に汗握る決闘シーンが見たい
- リドリー・スコット監督だから大外れなはずがない!
あらすじ
中世フランス──騎士の妻マルグリットが、夫の旧友に乱暴されたと訴えるが、彼は無実を主張し、目撃者もいない。真実の行方は、夫と被告による生死を賭けた“決闘裁判”に委ねられる。それは、神による絶対的な裁き── 勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者はたとえ決闘で命拾いしても罪人として死罪になる。そして、もしも夫が負ければ、マルグリットまでもが偽証の罪で火あぶりの刑を受けるのだ。 果たして、裁かれるべきは誰なのか?あなたが、 この裁判の証人となる。
(公式サイトより)
予告編
レビュー・解説

リドリー・スコット最新作は、中世の狂った空気を感じられる映画
監督はリドリー・スコット御大。前作は2017年の『ゲティ家の身代金』。なので劇場公開作品としては、前作から4年近くのブランクがあります。
ただし80歳を超えているので、とっくに引退していてもおかしくない年齢ではありますが……。
こんな説明をするのは無粋ですが、念の為に言っておきますと、『ブレードランナー』や『エイリアン』を監督したすごい人です。
ちなみに来年はグッチの3代目経営者が殺害された事件を描く『ハウス・オブ・グッチ』が公開されます。
まだまだ勢いは衰えていません。
『ハウス・オブ・グッチ』でグッチの3代目を演じるのは、本作でジャック・ル・グリも演じたアダム・ドライバー。(奥さん役はレディ・ガガだってよ)
監督のフィルモグラフィーを大別すると、『エイリアン』『ブレラン』などのSF系譜と、『グラディエーター』や『キングダム・オブ・ヘブン』などの歴史をテーマにしたものに分かれると思います。
(あとギャング映画の系譜もたくさんある)
本作は後者に分類されます。
リドリー・スコットは完璧主義者で知られ、セットや照明などのこだわりに凄まじいものがあります。
もはや世の中すべての映画のレベルが上がっているので、「うわー。これハリボテのセットみたい」とか「(車の移動シーンとかで)背景が完全に映像やん」とか思うことは昔ほど少なくなりました。
なので本作を観てもみなさん無反応かもしれませんが、それでも言わせてください!
本作のセットや美術のディティールすごくない???
目の前に中世のフランスが広がっています。
これってすごいことですよ。どこまでセットで、どこまでが実際にある建物か見当がつきません。
画面に映る群衆の服装まですべて手抜きがありません。
こんな中世フランス旅行気分を味わえる映画が他にある?
そんな世界で繰り広げられるのは、当時としては当たり前の話。
女性には人権がないってこと。
女性に人権なし!絶対服従!

本作を観て劇中のマルグリットがかわいそうと思える人は、正常な頭の持ち主でしょう。
現代では当たり前のMe Too以降の思想がインストールされた正常な脳の持ち主です。
本作では、妻をレイプされた旦那ジャン・ド・カルージュ、レイプの加害者と思われる人物ジャック・ル・グリ、旦那の留守中にレイプされたマルグリットの三人の目線からひとつの事件が紐解かれる。
- 真実がどこにあろうと、決闘で勝利した方の意見が正義。負けたら偽証!
- 子供は夫婦の営みの際に、性的に気持ちよくなった時にしか妊娠しない。
- 女性は男性が所有する私有財産。
本作では上に挙げたような考え方が当然のものとして描かれます。
教会の教えこそが絶対なんですね。
今とちがって科学なんてないに等しいですし。
現代の法律だと他人の飼っている犬を傷つけると、傷害罪ではなく器物破損が適応されます。
同じように映画内で描かれる中世のフランスでは女性は人権を持った女性ではなく、男性の所有する財産として扱われています。
愛する妻をレイプされたから戦うというよりも、私有財産に傷をつけられた感じですね。
当時の人の頭がおかしいというのは野暮でしょう。
それが当たり前の世の中で生きているのですから。

本作のラストでは建設中のノートルダム大聖堂が映ります。
そして浮かない顔のマルグリット。
まだまだ教会の考えが支配する、時代がつづくことを暗示しています。
むしろ始まったばかりで、2021年の今でも残っています。
時代や考えは少しづつしか変わっていきません。
ただし現代にこの作品を観たからには、この狂った描写に眉をひそめる必要がありますね。
決闘シーンもすごい。

また決闘シーンも息が止まりそうになるくらい、観ていて緊張します。
気を抜いたら即死まちがいなしの、騎兵用の槍であるランスでの壮絶などつきあい。
セットや美術にも手を抜かないように、バイオレンスにも手を抜きません。
不思議と血が出ないような、少年漫画みたいな戦いではないです。
目を背けたくなるくらい、血みどろです。
(余談)リドリー・スコットの作家性
本作の脚本は、マット・デイモン、ベン・アフレック、ニコール・ホロフセナーの三人。
マット・デイモン、ベン・アフレックが脚本で組むのは『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以来2度目。
リドリー・スコットは脚本に関わっていなくても、やはり不思議と作家性が出てしまうんですね。
おれが思うリドスコさんの作家性と思うのは、絶対的な支配者(神)と振り回される支配される側の悪戦苦闘なんですよね。
神という補助戦を引くとリドリー・スコットの映画は楽しくなると思います。
- 『エイリアン』では遭遇したら即死、絶対的な力のエイリアンと人。
- 『ブレードランナー』では、人と人に造られたレプリカント。
- 『エイリアン』の前日譚の『プロメテウス』では神と人。
(さらにブレランと同じくアンドロイドとアンドロイドを創った人の物語でした)
前作の『ゲティ家の身代金』でも、孫の身代金を払わない世界一の金持ちと、翻弄される周囲の人間を描いてきました。
80歳を超えてもリドリー・スコットは、ずっと神とは何かを探り続けている、自問自答している印象を持ちます。
本作『最後の決闘裁判』でも絶対的な力を持つものと、右往左往する人という構図はブレていません。
おれは「次はどんな手で、その構図を見せてくれるのかな」とワクワクしながら、新作を心待ちにしています。
自作『ハウス・オブ・グッチ』が楽しみなところ。
以前に書いた、リドスコ監督の前作『ゲティ家の身代金』の感想です。昔の記事なので稚拙です。

追伸
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
参考になればうれしいなあ。
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また以下の記事では、映画を安く観る方法をまとめています。
興味がある人は覗いてみてください。
