イントロダクション
ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの間の隠語である。
脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と行ったのだ。
この本はノンフィクションで作者の沢木耕太郎自身が、若かりし頃にアジアを横断した記録を紀行文として出版したものなんだよね。
1970年代(昭和40年代)の話で、当時インドのデリーからロンドンまで乗り合いバスで行けると言う噂があり、作者が実際に行けるかどうか試したんだ。
ちなみに、第1巻は『香港・マカオ』編となっており、スタート地点に設定しているインドには一巻の時点では辿り着いていないって言うね。
(ある年齢より上の人しかわからないけど、)むかし「電波少年」というテレビ番組があって、その中で有吉弘行が当時の相方とユーラシア大陸をヒッチハイクして横断したけど、あの企画の元ネタがこの本だったりする。
レビュー

「子供は何人いるんだい?」
「子どもどころか女房がいない」
「ほんとかい、二十六にもなって」
「おかしいか。君はどうなんだ」
「四人いる」
「女房が!」
「違う、子どもさ」
「ほんとうかい、二十一で」現地の人とのやりとりより
この本の内容は1973年(昭和48年)で、作者の沢木耕太郎が26歳の時の様子である。なので現在とはいろんな面で事情がちがう。
飛行機がオンボロだったり今だったら、ありえない描写が出てくる。
今はないトラベラーズチェックも出てくるし。
海外渡航に際して発行される外国旅行者向けの小切手。日本では旅行小切手(りょこうこぎって)とも称し、「TC」「T/C」「Cheque」と略称される。日本国内では2014年3月31日にアメリカン・エキスプレスによる発行が終了した後、2020年7月現在、正規に発行している事業者はない。
ちなみに本文にトラベラーズチェックを含めて、1900ドルの軍資金を持って旅に出るという描写があった。
今まで考えたことなかったけど、現在の貨幣価値でいくらになるんだろうと思い、今回ググって計算してみた。
当時は1ドル280円。
と言うことは、1900×280で約53万円。
またまたググって当時の物価を調べてみると、今でいうと約100万円弱。
たぶん!
(まちがっていたら、誰か指摘して欲しい)
100万円あったら、貧乏旅行ならなんとかアジアは縦断できそうな気もする……。
ところがどっこい!
作者の沢木耕太郎に計画性がなくて、大変なことになるんだよね。
それが読んでいて、愉快痛快なんだけど。
おれだったら心配症だから日本からバシッと宿を予約して、スケジュール通りに旅を進めると思うんだけど、沢木耕太郎はすべて成り行きまかせ!
今だったら成り行き任せでもスマホで宿を検索したら、すぐに見つけられそうだけど。
そんなわけで、安さ重視で連れ込み宿やら娼館に泊まったりする。
どれだけ怖いもの知らずなんだ。
計画性のなさここに極めりというのが、一巻の後半ではマカオでギャンブルにどハマりする。
このマカオのシーンが一巻の白眉で、サイコロの出た目で賭けをするんだけど、ディーラー側もグルで出目を操作してくる。
作者も負けじと、ゲームの必勝法を見つけ勝とうとする。
ここだけ、「ライアーゲームかカイジですか?」って感じ。
おれの最初に書いた貨幣価値の計算が正しければ、
100万円の軍資金のうち65万円くらいは一時期は負けているはず!
(スタート地点のインドははるか先なのにね!)
サイコロ賭博の必勝法を見つけて、取り戻したのか、負け越して旅は続くのか、
それはぜひ読んで確かめて!

おれ的スコア
余談
ちなみに最初にこの本を読んだ時は、もろに影響を受けてバックパックひとつでいろんなところに旅に行ったよ。
ニュージーランとか、トルコ、フランス、ロンドンとかね。
何もかもが懐かしい。